チャートを彩った洋楽の数々
1980年代、日本の音楽チャートでは洋楽が強い存在感を放っていました。マイケル・ジャクソンの『スリラー』や、シンディ・ローパーの『ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン』、カルチャー・クラブの『カーマは気まぐれ』といったヒット曲は、テレビ番組やラジオで日常的に流れ、多くの人に親しまれていました。
とくに1985年に発表された『ウイ・アー・ザ・ワールド』(USAフォー・アフリカ)は、チャリティーソングとしても大きな話題になり、日本国内でもレコードが広く流通しました。a-haの『テイク・オン・ミー』のように、斬新なミュージックビデオを伴った楽曲も注目され、視覚と音楽が融合する時代の到来を感じさせました。
ノーランズやベット・ミドラー、マドンナ、ボン・ジョヴィなど、ジャンルも多様で、ポップ、ロック、ディスコなどが混在したのもこの時代の特徴です。こうした音楽が、当時のリスナーに大きな刺激を与えていたことは間違いありません。
街にも洋楽があふれていた
1980年代の日本では、街に出ればどこからか洋楽が聞こえてくる時代でした。テレビやラジオだけでなく、レコード店、喫茶店、ディスコ、さらにはファッションビルの店内BGMに至るまで、英語の楽曲が当たり前のように流れていました。
このころはMTVやベストヒットUSAといった洋楽専門番組が人気を集め、音楽ビデオを通して海外アーティストの最新情報や映像がリアルタイムで届くようになりました。アーティストの衣装や振る舞い、髪型までが注目され、音楽を聴くという行為が視覚的な体験とも強く結びついていたのです。
レコードの輸入盤も一般的に出回っており、英語の歌詞カードを手に発音をまねたり、曲の意味を調べたりするファンも少なくありませんでした。洋楽を通して「海外へのあこがれ」が高まった時代だったとも言えるでしょう。
ファッションと価値観に与えた影響
洋楽は音楽の枠を超えて、ファッションやライフスタイルにも大きな影響を与えています。たとえばグランジロックの流れを受けた古着スタイルや、ディスコファッションを思わせるボディコン、アメリカンなストリート系のスタイルなどが登場し、それぞれが流行の一端を担いました。
マドンナが身につけたレースの手袋や大ぶりのアクセサリーは、当時の若者たちの定番アイテムになりました。ミュージックビデオで映るアーティストのファッションが、すぐに雑誌やショップの売れ筋になるほどの影響力を持っていたのです。
また、洋楽を通じて「自己表現」や「個性」という価値観が広まりました。それまでの画一的な流行に対して、「自分らしさ」を重視するスタンスが支持されるようになっていきます。音楽とファッション、そして生き方までもがリンクしていた時代だったと言えるでしょう。